一般社団法人 日本ゴルフツアー機構 会長 青木 功

選手が大人し過ぎる。
殻を破る若手が出てきて欲しい

「BMW日本ゴルフツアー選手権森ビルカップ」を
主催する一般社団法人 日本ゴルフツアー機構
(以下「JGTO」)の青木会長にインタビュー。
最近の日本ツアーについてや、
今後の大会のあり方について伺いました。

青木功(あおきいさお)プロフィール
1964年にプロ入り。1971年の『関東プロ』で初優勝を飾った。1980年の『全米オープン』ではジャック・ニクラウスと争って2位。1983年の『ハワイアンオープン』で米国ツアー初優勝を果たした。89年には豪州ツアーの『コカ・コーラクラシック』を制し、日米欧豪の4ツアーで優勝という快挙も達成。2013年には日本プロゴルフ殿堂入り。2015年には旭日小綬章を受章。2016年3月にJGTO会長に就任。

ギャラリーには積極的に声をかけ、
パフォーマンスも取り入れてほしい

▼最近のツアーについて

私が日本ツアーに出ていた頃、米ツアーの選手は8月頃にシーズンを終え、9月には家庭との時間を持ち、秋になるとダンロップフェニックスなどに招待されて日本に来ていました。海外の選手たちが、「招待されたので参加し、練習しなくてはいけないと思っていたら勝ってしまった」というような言葉を聞いて、日本ツアー終盤戦の我々は彼らから舐められていると感じていました。アメリカに行ったら絶対にどうにかしてやると思いました。ハングリー精神があったと思います。今の選手はハングリー精神がないとは言いませんが、緩いのかなと感じています。

▼日本ツアーから海外に挑戦する選手も増えています

成績が出ていない選手が多いですが、海外になじもうとしすぎているのではないかと感じています。英語をしゃべらなくてはなどと考える必要はなくて、自分はゴルフをしにきているんだという単純な考え方の方がやりやすいと思います。

▼選手のギャラリー対応について

私は昔からギャラリーに「おはようございます」と挨拶をしたり、「どこから来たの?」などと声をかけるようにしています。そうすると、ギャラリーからは青木が声をかけてくれたと大変喜ばれます。今の若い選手たちにも、ギャラリーに感謝の気持ちを込めて声をかけるようにしてほしいと思います。このようなコミュニケーションができるとギャラリーは大いに喜びますし、ファンが増えると思います。特に日本ゴルフツアー機構が主催する日本ゴルフツアー選手権ではぜひ実践してほしいですね。声をかけるだけでなく、試合中は闘争心を全面に出し、難しいパーパットを決めたら「ハー」と大きなため息をつくなど、言葉以外のパフォーマンスも積極的に取り入れてほしいと思います。

▼青木会長が日本ツアーに出ていた時は、もっと感情を出していたのですか?

私たちの時代は、選手のパフォーマンスを見にきていたお客様がたくさんいました。しかし、今は時代が変わり、ギャラリーが「ナイスバーディ」と声をかけると、選手はただ「ありがとうございます」と応えるだけになってしまいました。大人し過ぎますよね。
今の若い選手たちの中から、はみ出すというか殻を破るような選手が出てきてほしいですね。

宍戸ヒルズの
コースセッティングは
PGAツアーと全米オープンの
組み合わせ

▼コースセッティングについて

コースセッティングは、PGAツアーの試合と全米オープンを組み合わせたような感じです。こんなコースはなかなかありません。グリーンの硬さ(コンパクション)が全米オープンと同じ24、グリーンの速さはマスターズと同じくらいです。6番ホールのPar5を4に変更したり、17番ホール(Par4)のフェアウェイのファーストカットをフェアウェイに変更し、フェアウェイを50センチくらい広げると、より厳しいコースになり、スコアが出にくくなると思いますが、面白くなると思います。世界で戦える選手を育てるには必要ですね。

▼宍戸ヒルズカントリークラブというコースについて

こんなコースはなかなかないですよ。すべてが上手でなければならないコースですし、グリーンの速さも14フィートまで出せます。選手も宍戸ヒルズでプレーすることで育っていますね。

▼今年も2日目に大雨が降りましたが、夕方まで試合が行われました

当日は、グリーンキーパーに「ありがとう」と言いたかったです。本当に素晴らしい。真のコース作りのプロフェッショナルです。雨は激しく降っていましたが、グリーンには水が溜まらなかった。今までこんなグリーンを見たことがありません。本当に頭が下がります。

▼20年同じコースで開催してきたことのメリットは?

20年続ければ、コースの状態は素晴らしくなり、コースにも味が出てきます。観客も例えば「あそこから2オンができる」と分かりますし、選手たちも同じコースだからこその反応や表情を見せてくれます。

▼コースに望むことや変えて欲しいことはありますか?

もう少しだけグリーンの傾斜を小さくしたいですね。平らに近づけることで、ピンポジションの候補になる箇所を増やしたいです。選手たちは毎年のピンの位置を覚えていますが、「こんな場所があったか?」と感じるような新しいピンの位置を設けることができると、さらに面白くなると思います。

コースがさらに良くなり、
選手が強くなり、
地元のイベントが
さらに盛り上がることを願う

▼本大会は地元の笠間市とも深い繋がりがあります

開催前週の金曜、土曜、日曜くらいから地元のお祭りなどもできたらさらに良くなると思います。米国のマスターズでは前の週から2週間、学校などもお休みになりますが、日本ゴルフツアー選手権も今以上に市を挙げてのイベントになると素晴らしいですね。前の週から大会のムードを盛り上げるようなことができればと思います。
地元との連携は時間がかかるかもしれませんが、20年経って笠間市との絆も深まってきたと感じております。30年目に向けて、更なる関係強化を望んでいます。

▼毎年スナッグゴルフのイベントを開催していることについて

スナッグゴルフにより、子供たちは早くから打つ技術を身につけ、本格的なゴルフを早く始めることができると思います。病気になる子供が少なくなっていると思いますよ。打つ時にお腹に力を入れるので健康体になるんですよ。

▼最後に一言

時代は絶えず変わっていますが、ゴルフも変わっています。20年間は長い時間でしたが、振り返るとあっという間に感じます。10年後、20年後には、コースがさらに良くなり、選手が強くなり、地元の笠間市のイベントがさらに盛り上がり、すべての人が幸せになれることを願っています。

2023年大会で優勝した金谷拓実選手(右)と青木功会長

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